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星 空
もう夜風が心地良く感じられる季節。 それでも、いつまでも屋上で風に当たっていると身体が冷えてしまう。 ――― 寒くないですか。中に戻りましょう。
そう言いたかったのに････
「どうした？急用か？」 振り向いた瞳の底に沈められた翳り、吹き抜けた風が運ぶ微かな紫煙の匂いが、僕を黙らせる。 「･･･いえ。」 微笑って彼の隣に座り、上を見上げた。 「星が綺麗ですね。」 遠目にも賑やかな地上の繁華街の明かりに比べればささやかなものだけど。 薄墨ほどの雲もない晴れた夜空を、無数の控え目な瞬きが飾る。 「あぁ、そうだな。」 白いしなやかな指で前髪を捌きながら、彼も視線を上げる。 ふぅっと一息で吹き消してしまえるんじゃないかと錯覚しそうなくらい頼りなげなその光は、けれど決して消えることなく、途切れることもなく静かに輝き続ける。 その数知れない光達に彼が何を重ね見ているのか、僕はただ想像するしかない。 ならばせめて、今このひと時の静けさが少しでも長く続きますように。 「お前、寒いんじゃないか。医局に戻るか。」 「ううん、平気ですよ。」
この星達が貴方を慰めてくれるのなら。
高橋さん宅の『北見受祭』(現在は跡地)参戦作品。 どうしましょう・・・どーしようもなく百合くさい二人。（笑） |